ほくろの分類であるアッカーマン分類とは
Drアッカーマンは後天性の小型のほくろ「母斑(ぼはんと読む)」を全体的組織構築と臨床の特徴によって4型に分類している。
Unna(ウンナ)母斑、Miescher(ミーシャー)母斑、Clark(クラーク)母斑、Spitz(スピッツ)母斑の4型です。
☘️Unna(ウンナ)母斑:
頸部、四肢そして体幹に生じる乳頭腫状のほくろである。
手のひらや足底には生じない。
☘️Clark(クラーク)母斑:
生毛部とくに腹部、胸部、臀部などの非露出部に生じる。
悪性黒色腫の発生母地と考えられた時代もあったが、現在は否定的である。
☘️Miescher(ミーシャー)母斑:
顔面に好発し、ドーム状で加齢とともに色が抜けてくる。
表面が乳頭腫状を呈することは少ない。
☘️Spitz(スピッツ)母斑:
小児から若年成人の四肢や頭頸部に好発する。
🌸一口メモ
ウンナ母斑もミーシャー母斑も先天的な性質を持ちます(生まれつき発生するという意味ではありません)。
先天的な母斑は毛や付属器,血管に沿って真皮網状層(皮膚の深い部分)に入り込む性質があります。
したがって,毛が多いと真皮網状層で増殖する母斑細胞が多いのでより隆起する傾向があり,結果として半球状になるのではないかと推定します。
ウンナ母斑では中心に毛包を含むことが多いので,病理像はシイタケ型の分布になると思います。
🍒現在、このアッカーマン分類で記載するのが一般的になっています。
首やうなじに多いウンナ母斑の特徴
半球状から有茎性に隆起した柔らかい小結節で、時に桑実状、乳頭腫状を示す。
この乳頭腫状構造の表面は角化を伴わず柔らかい。
しかし角化が目立つ場合がある。硬毛を中心に伴うこともある。
色調は淡褐色・褐色から常色まで幅広い。
小児のクラーク母斑は成人になるにつれウンナ母斑に移行するケースが知られている。
また顔に多く認められるミーシャー母斑も首やうなじにも出現する。
ウンナ母斑の典型例を3例お見せします。
- ①1例目
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うなじにある茶褐色のウンナ母斑です。 一見して柔らかい感じです。
拡大像です。全体が柔らかく表面がシワシワの外観が特徴で、これを乳頭腫状構造といいます。中央付近では硬毛も見られます。
更に詳細が理解できる特殊カメラのダーモスコピー所見。薄褐色の局面に大小のメラニンの塊が多数認められます。また表面の凹凸も観察できます。
その血管強調画像ですが、しっかりほくろの細胞(母斑細胞という)の栄養を養っている多数の血管が描写されています。
- ②2例目
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クビにある濃褐色のほくろです。今一つ表面の形態が判然としません。
そこで別のカメラの画像です。干しブドウのような外見がすぐわかり、さわると柔らかいのです。これもウンナ母斑の典型例です。
ダーモスコピーの所見です。褐色から黒褐色の大型のメラニンの塊が集まっており、全体構築としてはglobular Patternです。表面には溝と隆起が見られ、乳頭腫状で、exophytic Papillary. Structuresの所見を呈しています。
その血管強調画像です。メラニンの塊を避けるように血管が走っています。
ほくろの細胞(母斑細胞)も生きていくためには栄養が必要なのです。
- ③3例目
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首にある黒褐色のほくろ。かなり黒く悪性も懸念があります。
ダーモスコピーで観察すると悪性のものではなくウンナ母斑の初期です。
首やうなじに多いウンナ母斑のダーモスコピー所見
- 小球状パターンとその亜型である敷石状パターンがある。
- いずれも表皮基底層にある境界型成分が少ないため、真皮乳頭層のメラニンを反映している。
- メラニンが少ないものでは常色から淡紅色の均一パターンを背景に色素小球や色素小点が見られる。
- 乳頭腫状のものでは、外側に向かった膨らみである外方向性乳頭腫様構築を示し、真皮内の多くのメラニンを反映する色素小球が多数認められる。
- 血管パターンでは、枝分かれしないCの字型に屈曲するコンマ様血管が特徴です。悪性黒色腫でこの血管が見られるのはごく稀であり、診断的価値がある。
小球状パターン:病変全体に円形〜楕円形の黒褐色〜黒色の小球つまりメラニンのかたまりが集簇性に認められる。
ここでホクロの診断に必要不可欠なダーモスコピーのお話しをします。
上図に示すように、裸眼で見るよりも偏光下(反射光を除去)で観察することにより、真皮上層(表皮より深い)にあるメラニンの密度や深さ、血管のパターンがわかるのです。
所見の解釈には皮膚科専門医のテクニックが必要です。
私が使用しているカシオのダーモスコピー用カメラ。
鑑別診断
- ①ほくろの色調が皮膚色で褐色調を示さないケース
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🌸軟性繊維腫
同じ有茎性の腫瘍であるが、基部が狭くなっていることが多い。
頚部ウンナ母斑は基部が広くなっています。
首の軟性繊維腫で、常色〜淡紅色、柔らかくぽにょんと飛び出しています。麻酔して首元をチョキンと切って終了です。良性腫瘍です。🌸色素性母斑(ほくろ):
加齢とともに色調が褪色している頚部のミーシャー母斑。ほくろです。🌸神経線維腫:
首にあり表面が平滑、キレイにドーム状で柔らかい。ウンナ母斑は表面が乳頭腫状です。
- ②色調が褐色調であるケース
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🌸脂漏性角化症:
角栓が認められる。表面がこの写真のようにイボ状や鶏のトサカのようになっているものもあります。🌸Hidroacanthoma Simplex:
腫瘍の表面が平らで滑らかである。ダーモスコピーでは、淡紅白色の規則的な網状構造で診断がつけられます。
🪷ただし、ウンナ母斑でも角栓が認められるケースがあり、その場合には肉眼では鑑別が難しく、ダーモスコピーの揺らしテストをする必要があります。
揺らしテストとは、接触型のダーモスコピーを当てて動かすと、柔らかいウンナ母斑は画像の所見が変化するのに対し、脂漏性角化症は硬いので動かしても画像の所見が変化しないことから鑑別できます。
またウンナ母斑の血管が一本線であるのに対し、脂漏性角化症のそれは二重ループのヘアピン血管である点が異なります。
なぜクビのほくろであるウンナ母斑は膨らんでいるのか?
- 顔のMiescher母斑もそうですが、ウンナ母斑も膨らみがあります。
- 通常子供の頃は膨らんだほくろはありませんが、成長すると膨らんできます。
- 一方足のほくろであるクラーク母斑は成長しても平らのままです。
- この違いは紫外線の暴露が関係しているようです。
- 実は膨らんだほくろの上層の細胞しか増殖能力がなく、その下層の細胞は
-
増殖能力がないようなのです(先天性のほくろは下層の細胞も増殖能力があります)。
つまり紫外線に影響を受ける上層の細胞だけがモリモリ増殖し、膨らんで見える。ところが紫外線暴露がない足などでは、その影響を受けないので平らなままであるという事のようです。
首周りのほくろ除去:治療前後の写真(15例)
- 施術:ダイオードレーザーによるほくろ除去
- リスク:瘢痕、凹み、発赤、水ぶくれ等
- 料金:1ミリ 6,000円〜(大きさ、隆起、部位によって異なる)
- A)
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クビにある褪色したミーシャー母斑です。 agingで色が抜けてきています。
完璧に除去できました。
料金:38,500円
- B)
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うなじにある小さな、軽度隆起したホクロ。
ウンナ母斑で、ダイオードレーザーで除去しました。
料金:27,500円
- C)
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うなじにある中央のほくろ一個の除去を希望。
若干赤みが残っていますが、時間とともに消えていきます。
一つなくなったので、もう一つお願いしますという事で、二つ目も除去しました。
初回のほくろ跡の赤みも引き、白くなっています。これは傷跡のよくあるパターンです。
料金:二つで55,000円
- D)
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うなじにあるドーム型のほくろ。触ると柔らかいです。
ほぼ跡もなく問題ありません。
料金:33,000円
- E)
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項部にある丸っこいほくろ。丸いチョコレートのようです。
若干色素沈着がありますが、時間経過で消えていきます。
料金:33,000円
- F)
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うなじにある2つのほくろ。
ミーシャー母斑です。
料金:2つで33,000円
- G)
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首にある赤茶色のほくろです。
少し色が抜けてしまいましたが良い仕上がりです。
料金:22,000円
- H)
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うなじにある下の方が不整形のほくろ。
若干跡になっていますが、除去できています。
料金:33,000円
- I)
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ウナジにある丸っこい2つのほくろ。
中央は白色瘢痕で、左は赤みが残っていますが、自然経過で落ち着きます。
料金:55,000円
- J)
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クビ(顎下)にあるあまり膨らみがないホクロ。
若干白くなっていますが、よい仕上がりです。
料金:38,500円
- K)
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首にあるウンナ母斑。表面にかなり凹凸があります。
ほくろのあった位置がわかりますか?ほくろの右にあるイボが目印です。
キレイに取れています。
料金:38,500円
- L)
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首にある中央が茶色で周囲が赤褐色のほくろ。
見事に取れています。
料金:27,500円
- M)
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首にあるほくろ。
しっかりダイオードレーザーで取れています。
料金:33,000円
- N)
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首周りのほくろ3個。それぞれ似た外観になっています。
ダイオードレーザーで除去しました。
料金:3個で66,000円
- O)
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首にある小さなホクロ。
問題なく取れています。
料金:16,500円
首の皮膚ガン
一見して普通のホクロとは違うと思います。角化した突起物があり、全体に細胞が増殖している様子が見て取れます。周囲は炎症が波及して赤くなっており、化膿していて圧迫するとウミが出てきました。
扁平上皮癌と思われます。