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ワキ汗・脇や手の多汗症
ワキ汗・脇や手の多汗症
ワキ汗(脇汗)や脇の多汗症(腋窩多汗症)が皮膚科で2020年から保険治療が可能となりましたが、手のひらには適応がありませんでした。2023年6月から手のひらの多汗症(手掌多汗症)にアポハイドローションが保険治療が可能となり、治療の幅が拡がりました。
💧💧多汗症とは
多汗症とは日常生活で困るほど発汗量が多くなる病気です。
これは完全に病気です。
顔や脇、手のひらなど体の一部だけの多汗症と、全身の多汗症があります。仕事や勉強に集中できない方もいるのです。
他の疾患や障害によって起こるケースもありますが※、原因が見つからないケースも多数あります。
※末梢神経・中枢神経疾患、内分泌疾患、膠原病、自律神経障害等
💦脇の多汗症の困りごと
ワキの多汗症の患者さんは以下のような症状に悩まされています。
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- 制汗スプレーや汗拭きシートが一年中手放せない
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- シャツの脇の部分に汗じみができて人目が気になり、電車で吊り革を持つことをためらったり、人前で発表する時にとても緊張する。
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- 脇から汗が流れ落ちる不快感で、勉強や仕事に集中できず困っている。
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- ワキ汗が気になって好きな洋服を着ることができない。
原発性局所多汗症の診断
まず局所的に過剰な発汗が明らかな原因がないまま6カ月以上経過すること、診断基準6項目のうち2項目以上を満たすことで確定されます。
診断基準 | |
1 | 最初に症状がでたのが 25歳以下であること |
2 | 対称性に発汗がみられること |
3 | 睡眠中は発汗が止まっていること |
4 | 1週間に1回以上多汗のエピソードがあること |
5 | 家族歴がみられること |
6 | それらによって日常生活に支障をきたすこと |
※ この中で2、3が重要で片側しかない発汗や、睡眠中に発汗が止まらない場合には別の病気を考えるべきです。
重症度判定は発汗検査やHDSS(hyperhydrosis disease severerity score)を用いておこなっています。
HDSS | |
1 | 発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない |
2 | 発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある |
3 | 発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある |
4 | 発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある |
💧💧交感神経とエクリン汗腺
交感神経とエクリン汗腺の部分を拡大します。
交感神経からアセチルコリンという物質が出て、それが汗腺の表面にあるムスカリンM3受容体にくっついて発汗が起きます。
💦治療:
①エクロックゲルやラピフォートワイプ:
- 先にムスカリン受容体に入り込み、アセチルコリンがくっつくのを防いでいるのです。
②塩化アルミニウム:
- 汗の管をアルミニウムが塞いでしまうのです。
💦これだけ保険外です。 ③ボツリヌストキシンであるボトックス:
- 交感神経からアセチルコリンが出るのを抑えてしまうのです。
💦これは保険と保険外があります。 ④🌈6月に発売されるアポハイドローション:
- 手のひらの多汗症に唯一使用できる製剤で、作用機序はエクロックゲルやラピフォートワイプと一緒です。
用法・用量は「1日1回、就寝前に適量を両手掌全体に塗布する」 ⑤抗コリン内服薬:
- 本邦で唯一保険適応になっているのはプロバンサインだけです。
人間は発汗による体温調節で文明を築いてきました。 |
Q 汗はなぜ出るのでしょうか?役割を知りたいです。 A 汗は保湿、感染防御、体温調節、角質そしてアレルゲン等に重要な働きをしています。 |
- 保湿
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汗の中の尿素、乳酸ナトリウムが天然保湿因子として働いています。更に不感蒸泄も大切です。不感蒸泄により、角層中の乳酸とカリウムの増加、そして水分量の増加が認められているのです。
- 感染防御
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汗由来の成分である乳酸、尿素、ナトリウムそしてカリウムは保湿の他に、皮膚のPHを上昇させて、細菌やウィルスの侵入などに対するバリアの役割を担っているのです。
更に汗由来の抗菌ペプチド(ダームサイジングやβーディフェンシン等)も細菌増殖を抑制しています。 - 体温調節
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暑い時や運動した時にかく汗は体温調節が目的となります。
皮膚表面から汗が蒸発する時に、体から熱を奪い体温の上昇を防いでいるのです。 - 角質への影響
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セリンプロテアーゼ阻害物質の分泌により、過剰な角質剥離をブロックしています。
- ダニ等への影響
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システインプロテアーゼ活性阻害作用があり、ダニなどのアレルゲンの活動性をなくしています。
💦汗の仕組み
皮膚にはエクリン汗腺とアポクリン汗腺があり、通常の発汗はエクリン汗腺が担っています。アポクリン汗腺はワキガやフェロモンと関連します
環境温度の上昇が温度受容器により感知され、視床下部の体温調節中枢に伝わる。そしてその信号は交感神経を介して発汗、蒸発させ体温を下げるのです。