お悩み別外来
口唇(くちびる)のシミ
- ダーモスコピー(特殊拡大鏡)の理論
- 口唇粘膜の特徴
- シミ=口唇メラノーシス(oral melanosis)の特徴
- シミ=口唇メラノーシス(oral melanosis)の原因
- シミ=口唇メラノーシス(oral melanosis)の鑑別疾患
- 口唇のシミの類義語
- 口唇のシミのダーモスコピーの所見
- 口唇のシミの症例提示
- 料金
- 口唇のシミのレーザー治療
- 口唇のシミの病理組織所見
- 口唇のシミとほくろの鑑別には
口唇(くちびる)のシミに似た病変には①口唇メラノーシス(oral melanosis) ②ほくろ③血管腫(静脈湖) ④内蔵疾患に伴ったもの ⑤悪性黒子等があり、悪性病変の 鑑別が最も重要です。治療はレーザーが主流です。
これらの粘膜疾患や悪性病変の鑑別に必須なのがダーモスコピーで、皮膚科医の聴診器ともいうべき診断ツールです。
ダーモスコピー(特殊拡大鏡)の理論
ここでシミやホクロの診断に必要不可欠なダーモスコピーについて一言。
上図に示すように、裸眼で見るよりも偏光下(反射光を除去)で観察することにより、表皮より深い真皮上層までのメラニンや血管のパターンがわかるのです。
読影には皮膚科専門医のテクニックが必要です。
口唇粘膜の特徴
①毛の組織、汗の組織そして皮脂腺がない。
②メラニン色素は極めて乏しい。
③表皮は角化に乏しい重層扁平上皮である
④真皮乳頭層が表皮に向かって、突き上げるように高く形成され血管が豊富である。
⑤血管が豊富で角層が乏しい(角層反射が乏しい)ため肉眼的に赤く見える。
⑥キューピッドラインのような皮膚粘膜移行部は、皮膚と粘膜の両方の特徴を併せ持つ。
⑦連続する口腔粘膜の上皮より薄い。
このように口唇は通常の皮膚と異なる構造を有しています。
シミ=口唇メラノーシス(oral melanosis)の特徴
口唇に限局したシミで境界明瞭、平坦で小型(2~5ミリ)のメラニン沈着を指す。
全身症状はなく先天性ではない。個数は一個から多数個まで幅広く、下口唇に多いが上口唇にも多数認められるケースもある。
シミ=口唇メラノーシス(oral melanosis)の原因
口唇、特に下口唇は部位的に断続的な刺激を受けやすいと考えられ、外的刺激が本症の誘因になっている可能性があります。中年以降の成人でも老化現象として認められるので、光老化も一因と考えられます。
シミ=口唇メラノーシス(oral melanosis)の鑑別疾患
🌷アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎に合併したもので、ほぼ全例に乾燥・落屑などの口唇炎を伴う。
🌷Peutz-Jeghers syndrome
口唇・口腔内そして手足のメラノーシス、更に消化管ポリポーシスを伴う遺伝性疾患である。しかし家族歴がない例も多い。
🌷Laugier-Hunziker disease
口唇・口腔内そして手足のメラノーシスが見られるが、消化管ポリポーシスを伴わない。発症が中高年で、遺伝性がない。
🌷アジソン病
腎臓の周囲にある副腎の機能が低下し、副腎皮質ホルモンが不足することにより様々な症状が出る疾患です。
🌷血管腫(静脈湖)
血管の良性腫瘍で、口唇のほくろやシミと紛らわしいケースがあります。
🌷口唇メラノーマ
極めて稀であるが、悪性度は高い。色の濃淡が強い場合や、形の非対称性などで疑い、生検やダーモスコピーで確定させる。常に念頭に入れておくべき疾患です。
🌷Albright syndrome
皮膚カフェオレ斑、線維性骨異形成症、ゴナドトロピン非依存性思春期早発症を三主徴とする症候群です。
🌷Carney complex
心臓粘液腫、皮膚の色素斑、内分泌機能亢進状態を合併した症例で、報告症例の約半数が常染色体優性遺伝です。
🌷固定薬疹後
🌷多形紅斑のびらん部位
🌷口内炎
🌷慢性歯肉炎
🌷出血を生じた粘液のう腫
🌷雀卵斑(そばかす)
そばかすが口唇にできることはありません。シミとは病態が違います。
🌷ほくろ
鑑別が難しい場合があります。(後述) 等
口唇のシミの類義語
oral melanosis、solitary labial lentigo、labial melanosis,口唇メラノーシス等ありますが、権威あるアンドリュースの教本ではoral melanosisを採用しています。
また ダーモスコピーの国際学会であるinternatonal dermoscopy society(IDS)ではLabial melanotic macules を採用しています。
口唇のシミのダーモスコピーの所見
まだ体系だった分類ができていない部分があります。
メラニンの位置、量によって色調が変化してくるのが、ダーモスコピー所見の基本です。
通常の皮膚であれば、基底層のメラニン増加は淡い褐色ですが、口唇メラノーシスでは濃い褐色です。
これは角層が薄いゆえに、乱反射が少ないないことが影響していると思われます。
口唇粘膜のメラニンパターンは以下の5パターンに分類されています。
①網状パターン
②線状パターン
③均一パターン
④小球状or小点状パターン
⑤ミックスパターン
その所見は毛細血管の走行、真皮乳頭層の配列そして発生部位によって変化してくるようです。
- ①網状パターン
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下口唇にある褐色調の色素斑が見られます。
ダーモスコピーの所見です。下方が濃く網目が見られ、上方は淡くなっています。
更に拡大すると、下の方がリング様パターンで、上の部分が魚のうろこ状パターン。
共に網状パターンの一種であることが理解できます。
- ②線状パターン
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境界明瞭な濃褐色色素班です。
口唇以外の毛のある部位で表皮基底層のメラニン増加は淡褐色に見えますが、口唇では濃褐色です。
これは口唇に角層がないため、角層反射の欠如が影響しているものと思われます。
そのダーモスコピー所見ですが、ほぼ規則的な線状パターンです。
- ③均一パターン
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下口唇にほぼ境界明瞭な淡褐色の小さい色素斑が縦に配列しています。
これをダーモスコピーで観察すると、全体にほぼ同じ淡褐色の色調が確認されます。均一パターンです。
- ④小球状or小点状パターン
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これも②のケースと同様に濃褐色を呈しており境界もハッキリしています。
ダーモスコピーの所見です。境界明瞭で全体的に茶色で覆われています。
更に拡大すると、薄茶色の下地に大小の茶褐色の斑点が浮かんで見えると思います。
これは小球状or小点状パターンです。
- ⑤ミックスパターン
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以上の4パターンが同一病変内に複数認められるミックスパターンもあるのです。
症例提示
🌼使用機器:ダイオードレーザーor Qスィッチヤグレーザーによるシミ除去
🌼料金:口唇のシミ取り放題49,500円(税込み)or1ミリ11,000円(税込み)
🌼リスク:浮腫、発赤、くぼみ、色素脱出 等
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ケース1
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上口唇に多数の細かい色素斑が見られます。
ダイオードレーザーにてほぼ目立たなくなりました。
料金: 49,500円
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ケース2
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上口唇のほくろ?両方ともシミです。
ダーモスコピーでの診断が決めてになります。
左側だけ除去希望でキレイに除去されています。
料金:22,000円
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ケース3
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下口唇の中央にはっきりとした黒褐色、ほぼ円形の色素斑が観察できます。
一回照射後少し上の部分が残っていたので、ここを再照射して終了しました。
料金:33,000円
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ケース4
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下口唇中央に小さいメラニンの集まりが縦に見られます。
Qスィッチヤグレーザーで完全に消えています。
料金:11,000円
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ケース5
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これは30代、アトピー性皮膚炎の方の下口唇の大きなシミです。
長年のアトピー罹患歴があり、唇が乾燥し荒れています。
Qスィッチヤグレーザーで問題なく消えています。
料金:33,000円
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ケース6
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下口唇にある境界明瞭な淡褐色のシミです。
Qスィッチヤグレーザーでキレイに反応しています。
料金:33,000円
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ケース7
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中央がほくろで、その右側の淡褐色の色素斑はシミです。
両方ともダイオードレーザーで除去出来ています。
料金:33,000円(2個で)
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ケース8
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下口唇に濃褐色の大きな色素斑が多数観察され、中央には小さなしみも見られます。
本人が大きな色素斑だけ取って、目立たなくなれば良いという考えだったので、
まだ残っていて除去可能なのですがこれで終了しました。
中央のしみの右に新しいしみができており、シミができやすい肌質であることは間違いありません。
この方は下口唇の他、舌にもメラニンの沈着があり、
悪性のメラノーマやPeutz-Jeghers syndrome等の全身疾患の
部分症状を念頭に置いて調べなければなりません。
当院に来院する前に、大学病院で皮膚を切って調べ、悪性でない事が確認されています。
料金:49,500円(今回の改訂) 舌は除く
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ケース9
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下口唇にある双子のしみ。ほぼ色むらのない色素斑が認められます。
ダーモスコピーで単純なしみと診断。Qスィッチヤグレーザーで除去しました。
料金:38,500円
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ケース10
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上口唇のシミで、境界ほぼ明瞭です。
ダイオードレーザーで除去。若干残っていたので再照射しました。
料金:27,500円
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ケース11
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下口唇のシミにダイオードレーザーを照射しました。
照射直後の状態です。薄灰色に変色しています。
料金:22,000円
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ケース12 NEW
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下口唇のシミです。いつものようにダーモスコピーによってほくろではない事を確認。
アレックスレーザーで除去しました。
料金:22,000円
料金
1ミリ 11,000円
口唇取り放題 49,500円 (ほくろは別です)
口唇のシミのレーザー治療
ダイオードレーザー、Qスィッチヤグレーザー、Qスィッチルビーレーザーが主流です。炭酸ガスレーザーは口唇のシミに対して、強く反応する傾向がありお勧めしません。
2種のQスィッチレーザーはシミ除去はできますが、盛り上がったほくろは除去できません。
ダイオードレーザーは両方除去可能です💕
当院ではダイオードレーザーとQスィッチヤグレーザー(トライビームプレミアム)を使用しています。
トライビームプレミアム
🌼リスク:浮腫、発赤、くぼみ、水ぶくれ、色素脱出 等
口唇にアートメークを入れている方はレーザー治療ができません。
口唇のシミの病理組織所見
口唇メラノーシスの組織像は表皮基底層のメラニンの増加です。真皮上層に若干のメラノファージも見られる場合があります。(下記の私の文献を参考にしてください。)
🌸参考までに私が書いた40年前の文献を引っ張ってきました。
タイトルは「Solitary Labial Lentigo」です。
- 皮膚臨床 24(13);1448~1449、1982
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10歳の女児。家族歴、既往歴に特記すべきことはありません。
約7ヶ月前より下口唇に色素班を一つ認め、徐々に拡大し色が濃くなってきたため、悪性化を心配して来院しました。
長径5ミリ楕円形、表面平滑の褐色色素斑で、周囲との境界は明瞭であり色調の濃淡はありません。
色素斑の一部を切って調べたのがこの画像です。
専門的には病理組織所見と言います。軽度の錯角化、表皮肥厚と基底膜でのメラニン色素の増加(赤矢印)が見られるのみで、メラノサイトの異型性はなく、ほくろの細胞である母斑細胞も認められません。
口唇のシミとほくろの鑑別には
この画像は、大きい方がほくろで、小さい方がしみです。
これを血管を反映させる画像に変換したのが下の画像です。
血管反映画像では、ホクロに赤くしっかり血管が見られますが、シミには血管が認められません。
これは何を意味しているのかというと、ほくろはホクロの細胞(母斑細胞という)が増殖して出来ているわけです。
その細胞は栄養血管がないと生きられません。
生きている細胞はみなそうなっています。
一方シミは単にメラニンという色素が沈着しているだけで、細胞が増殖しているわけではありません。
つまり細胞はないのです。だから栄養血管も必要ないのです。
ほくろかシミか区別が難しい場合があるのですが、この血管強調画像が鑑別の一つの目安になる可能性があります。
参考までにほくろの細胞(母斑細胞)を顕微鏡で見ると塊で見られます(赤矢印)。
茶色のメラニンも観察され、ほくろの細胞がメラニンを作っている証明です。
🍏因みに、口唇のしみやほくろと間違えやすい血管腫である静脈湖のケースも提示しますが、
しっかりと血管が増えています。
下口唇にあるぷっくりした赤紫色のできものがあります。一見ほくろのようにも見えます。
ダーモスコピーで観察すると、一目瞭然です。大小の赤紫色のかたまりが白い模様で分けられています。
これは静脈湖という血管の良性腫瘍です。
これを血管反映画像でみると、静脈湖の中にハッキリと多数の血管がはっきりと描かれています。
血管がたくさん増える腫瘍なので、血管がたくさんなければ生きられないのです。
下口唇にあるこれはどうでしょうか?ほくろかシミか肉眼ではわかりません。
そこでダーモスコピーの登場です。赤紫色の班が白い模様で分けられています。
これも血管の腫瘍である静脈湖です。
更に血管強調画像で見るとはっきり血管が増えています。
上口唇にあるプックリしたできものがあり、ほくろと考えました。
これをダーモスコピーで見ると、白濁した膨らみの中に淡褐色~濃褐色の小さい色素小球が多数観察でき、ほくろの所見です。膨らみのあるシミはありません。
治療ですが、QスィッチヤグレーザーやQスィッチルビーレーザーでは絶対に除去できません。
ダイオードレーザーで除去しました。
これは平らで茶褐色の色素斑です。
ダーモスコピーで見ると中央が濃褐色で、周囲は淡褐色に薄くなっています。これもほくろです。
このようにダーモスコピーで検査しないとシミとほくろの鑑別ができないのです。
つまり肉眼では鑑別不可能なケースが多いのです。
🌸繰り返しますが、このように口唇のシミ病変の診断にはダーモスコピーが極めて重要な役割を担っています。
そしてそのダーモスコピー画像の解釈は、美容外科医やえせ美容皮膚科医では無理で、皮膚科専門医でなければ難しいのです。