お悩み別外来
ホクロ除去・レーザー治療
ほくろに似た悪性腫瘍
臨床像は皮膚病変の事を意味し、そこから臨床医は良性か悪性かを考える。
次にダーモスコピーで確認する。それで診断が確定できない場合には病変を切除して病理組織学的所見を得て確定診断に至る。
ここで病理組織学的所見からダーモスコピー所見と臨床像を比較、対比してフィードバックさせる。
つまり3つの所見は三位一体の関係なのである。
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① 顔面の悪性黒色腫
図1 臨床像 [+拡大]臨床像
イボ状の黒色結節があり、その左側に沿って黒色の色素班が拡大している。いわゆる“しみ出し”現象もあり臨床的にも悪性黒色腫を考える。 -
② 鼻基部の基底細胞癌(No.1)
図1 臨床像 [+拡大]臨床像
境界ほぼ明瞭、中央に陥凹のある黒褐色の結節、ロウ様の光沢(+)。結節潰瘍型の基底細胞がんを臨床的に疑う。-
図2 ダーモスコピー所見 [+拡大]ダーモスコピー所見
青白色の薄いモヤの中に存在感のある太い血管が枝分かれしている。
BCCに特徴的な樹枝状血管である。
非常に細かいものから大きなものまでメラニンの集合体を現わすblue-gray dots、nestsが多数認められる。 -
図3 病理組織学的所見 [+拡大]病理組織学的所見
中小の胞巣が真皮全体に幅広く増殖している、構成細胞は基底細胞類似で、辺縁にはだ円型の核を持つ腫瘍細胞が柵状に配列している。これは休止期毛包でみられる毛芽細胞に類似した形態であり、毛芽細胞分化の所見である。
腫瘍細胞巣と間質の間にはムチンの沈着が見られる。infundibulo-cystic型である。
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③ 鼻基部の基底細胞癌(No.2)
図1 臨床像 [+拡大]臨床像
鼻基部にある光沢性結節。はっきりした黒褐色の小結節が5ヶ存在し、陥凹部を取り囲んでいる。辺縁にも更に小さい茶色の丘疹が数個認められ、ベースの色調も淡赤色から茶褐色と変化に富んでいる。 -
④ 鼻下の基底細胞癌 -これでも悪性なのです-
図1 臨床像 [+拡大]臨床像
左鼻腔下の赤みがかかった小結節。
辺縁の3ヵ所に黒褐色の小結節があり、毛細血管の拡張も確認された、一見たいした皮フ病ではないような所見ではあるが、注意せねばならない臨床像である。 -
⑤ 腹部の基底細胞癌
図1 臨床像 [+拡大]臨床像
80代の男性、腹部に生じた境界ほぼ明瞭、扁平隆起性の黒色結節。中央は陥凹し、外側は軽度ながら切れ込みがあり分葉状、表面はロウを塗ったような光沢が認められる。 -
⑥ へそに生じた悪性黒色腫
図1 臨床像 [+拡大]臨床像
60代男性。臍部に経29×16mmの落屑を伴う境界明瞭な不整形黒色斑。黒色斑はへその内部に連続している。
< 治療 >
腫瘍辺縁から1cm離して、臍部は 瘢痕組織痕上、その周囲は腹直筋上で、腫瘍を切除し、単純に縫縮した。拡大切除は行わなかった、再発、転移は認められていない。
< 考え >
臍は、胎児期の尿膜管、卵黄腸管とその血管、臍動静脈からなる臍帯が出生後に離断されて瘢痕化したものであり、皮下脂肪は存在せず、瘢痕組織は腹膜まで連続している。リンパ経路については、両鼠径、両腋窩リンパ節、さらに外腸骨リンパ節に注ぐ流れがある。また、前腹壁は血管が非常に豊富な部位であるゆえに、臍部は門脈系と体循環系の吻合部位になっている。
Barrowによれば、臍部(へそ)の腫瘍の大半は良性腫瘍である。しかし677個中56個、8.4%は悪性であると報告している。その中で臍部の悪性黒色腫は比較的まれである。臍部(へそ)に生じた悪性黒色腫は解剖学的理由から周囲への浸潤や遠隔転移を起こしやすい部位であるので、今後とも充分なフォローアップが必要である。
井上喬之他:皮膚病診療 34:297,2012
Barrow,M.M:J Chronic Dis 19:1113,1966
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⑦ 目の縁に発生した基底細胞癌
図1臨床像
境界不明瞭な大きな色素系腫瘍で、一見して部位により色調の変化が認められます。はっきりした黒~茶色を呈する部位と、モヤがかかったような茶褐色の部位が見られます。痛み等の自覚症状なく10年前から徐々に増大してきたようです。-
図2 ダーモスコピー所見 [+拡大]ダーモスコピー所見
メラニンのかたまりを示すmultiple ovoid nestsが左右に、辺縁には葉状のleaf like areaやmelanin dotsが存在する。
膠原繊維の増生を示す白いモヤの中を、典型的な血管arborizing vesselsが多数、中央や辺縁に走行している。
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